本当に「英語」は必要ですか?

本屋に行けば、英語教材が山のように置かれていて、テレビでは有名な若手プロゴルファーが世界に出ていくために父親が与えてくれた英語教材の宣伝をしている。老若男女、誰に聞いても「英語を話したい」や「英語を勉強したい」という答えが返ってくる。

どうしてなんだろうか。英語ができるってそんなに素晴らしいことなんだろうか。私が49年生きてきた人生の中で本当に英語が必要だったときは、アメリカ人など英語圏の人間と仕事をするときやプライベートで友達になるときだけだった。正確に測ったことはないが、英語が必要だった時間を合計しても49年のうちの1-2年にしかならないのではないだろうか。

私は帰国子女でない日本人の中では英語を使うほうの人間だと思う。今のTOEICの点数は825点である。正直、低い。なので、英語ができるとは思っていない。

大学時代は、横須賀の米軍基地で31アイスクリーム店やピザハウス、コーヒーショップ、ステーキハウスで米兵相手の接客のアルバイトをしていた。最初は全く英語ができなかった。高校時代の英語の成績が10段階で2をとるくらいの英語嫌いだった。そんな私がいきなり英語を使うアルバイトをした。最初は31アイスクリーム。アメリカではバスキンロビンズと呼ばれている。しかし、発音は、「ばすきん らびんず」に近い。バイト仲間のハーフの女の子が、ひらがなでよく「ばすきん らびんず」と書いていたので英語ネイティブな彼女にも「ばすきん らびんず」と聞こえていたのだろう。4年間米軍基地で英語を使っていたおかげでヒアリングはものすごくできるようになった。大学4年のときのTOEICの点数は650点位だった。

社会人になってからは、27-8歳でテキサスインスツルメンツに勤務し始めたときに英語を使うようになった。アメリカで販売されている製品を日本で売るコンサルタントをしていたのだが、製品を理解するには英語のマニュアルを読み、外人講師から英語で製品のレクチャーを聞くしかなかった。30歳位のときのTOEICスコアは740点位だった。

その後、外資系IT企業を渡り歩くのだが、日本に来ている外資系企業では英語を使う機会はそう多くない。これは部署やポジションによって全く異なるが、外資系企業が日本に来ている目的を考えれば納得できる。彼らは日本人にモノやサービスを売るために日本に来ている。日本語で日本人に自社製品やサービスを売ることができる人が求められている。

TOEICに頼る日本企業

TOEICは、本来、英語圏に飛び出していくとき、いわば、英語で生きる手前の実力を知るためのツールである。しかし、日本では企業が英語力の指標として使っている。多くの帰国子女が900点以上とるレベルの低い試験だが、英語で生きていない日本人の実力が低いのは仕方ない。企業が、社員の優劣を決めるのになぜ、英語の試験を使うのか、ということを研究したことがないので想像でしかないが、大企業での人事管理に紐付いていると考えられる。

大企業では円滑な経営をするために企業内の序列を保つ必要があり、官僚的な社員が現場の社員を管理している。官僚的な社員は、総合職として採用される人間の中でも上位=良い大学=東大・早慶上智クラスの者である。しかし、企業における日常業務では学歴によらず、優秀な働きをする社員が出てくる。本当の実力主義ならこういった学歴は低いが優秀な社員が経営に携わるべきだが、悲しいかな、それでは企業経営はできない。現場で優秀なのと、経営者で優秀なのは別の能力が必要となる。やはり、経営者もしくは経営者を支える社員にはお勉強ができる者が適している。そこで、全社員が受けるTOEICが必要となる。

大企業内では、新卒採用から昇給・昇格レースが始まり、35-40歳で管理職になる。同期社員はライバルであり、誰が最初に管理職になるか、というのが大きな関心事になる。偏差値の低い大学出身の営業が良い成績をあげ、偏差値の高い大学出身の営業が悪い成績しかあげられないというのは良くあることだが、20年後、30年後を考えると学歴の高い者を出世させておかなくては良い経営者がいなくなってしまうかもしれない。そこで、全社的な成績のものさしとしてTOEICが登場する。学歴の高い者はTOEICで良い点を取ることができる。TOEICは英語で生きる前提となる基礎的な英語力のテストなので、お勉強をすれば確実に高得点をあげられる。いわば、学生時代の延長なのである。営業成績の良い社員と営業成績はあまりよくないけどTOEICの点が高い同期社員を一緒に昇進させれば不満はでない。「なんで、あいつが、昇進するの」「ああ見えて、英語できるらしいよ。この前のTOEICで高得点だったらしい」「じゃ、しょうがないか」ということになりやすい。「そんな馬鹿な!」と思うかもしれないが、皆さんのまわりもこんな感じではないでしょうか。そうでなければ、これほど、英語教材が売れる訳がない。

TOEICに頼っている企業や日本社会に憤っている某先生は、このあたりを見誤っている。本当に英語を身に付けるにはTOEIC教材を使わない方が良いのはその通りであるが、多くの日本人ビジネスマンにとって英語を身に付けるよりTOEICで高得点をあげるほうが重要なのである。先に指摘したように多くの日本人ビジネスマンは日常業務で英語を使わない。企業に、経営者に、人事部に認めてもらうには、日常業務での好成績とTOEICでの高得点が必要になる。本末転倒ではあるが、実際のところ、こんな感じでTOEICがもてはやされている。

あなたは、読点(、)を間違えずに打つことができますか。

私はTOEICうんぬん以前に日本人は英語ではなく、日本語を学ぶべきだ、と考えている。日本人の大多数は日本国内でビジネスをしている、もしくは、日本国内でビジネスをすることになる生徒・学生だ。もっとも重要な言語は日本語であり、日本語できちんとコミュニケーションをとることがもっとも重要なはずだ。しかし、私を含めた多くの日本人は読点(、)を間違えずに打つことができない。いったい、日本の国語教育はどうなっているのだろうか。

Twitterの140文字を使って自分の言いたいことをフォローワーに伝えることができる日本語力がその人のコミュニケーション力だと考えることもできる。ハイパーリンクや連続ツィートに頼ることなく、140字で自分の意見を述べ、フォローワーに誤解されることなく、その意見を理解させる、という日本語力を身に付けることで、日常業務が楽に進むようになる。出世だって見えてくる。きちんとコミュニケーションが取れなくて生まれる誤解があなたの印象を悪くし、業務成績を低くしているのではないですか。

私のTOEICの点が650点から825点に伸びたのは英語の勉強をしたからではなく、日本語の勉強をしたからにほかならない。個人的にはもう少し日本語を勉強してから英語の勉強に移ろうと思っている。このブログの目的は英語の勉強をするな、ということではなく、日本企業におけるTOEICの位置づけを理解し、それはそれで活かしつつ、日本語の勉強をしてコミュニケーション力を身に付けたほうがいいですよ、ということです。私の拙い日本語力ではうまく表現できなかったかもしれませんが、、、

  1. atm09tddannanandaからリブログしました
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大妻女子大学人間関係学部社会学専攻准教授ですが、ここでの発言は、カクテルパーティでの会話に近い、軽いものです。数年前まで外資系ビジネスマンでしたので純粋な大学教員ほどの見識はありません。40代既婚子持ちおやじの戯言です。元TIerで元オラでもあります。

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